利用者ブログ - 10.21シリーズ:神戸と兵庫のご当地ソングたち


いきなり場所の名を告げることからこの曲は始まります。
港町は人の行き交う場所であり、出会いと別れが用意されているのです。
この曲が流行ったのは1972年(昭和四七)。一世を風靡したムードコーラスに退潮の兆しが見え始めた頃になりるでしょうか。
それまでがむしゃらに経済発展を最優先させてきた結果、その勢いが鈍り始めた頃でもありました。


ムードコーラスが似合うのは大人の社交場としての役割を果たして来た、雰囲気のある酒場ですね。そこで男女が過ごす甘い一時を華麗に演出するのがこれらの歌でした。そうですね、夜の名曲ですよね。
言葉として書かれていない情景がこの曲を耳にする毎に浮かんで来ます。
演歌は暗いテーマを扱うことが多い。この曲も別れと恨み、傷心。それから力強く生きる決意も。



これは時代性にも合致しているのかもしれませんが。そうですね。それまでの生き方が徐々に通用しなくなっていくことの予兆も見えているように…。
事実、この歌が流行った翌年には日本は長く続くことになる不景気の時代がはじまるのですから。
歌の直接の主人公は若い女性のようです。単純な絵図では、理由があって愛する人と離別し、ここ神戸まで辿り着いた、ということになるでしょうか。
しかし、これを男性に置き換えると、信じていた社会に裏切られた、という見方もできるような気もしてきませんか。


少し辻褄が合わない箇所もあるのですけど、要するに裏切れた人間がどこかの街へ流れ着いた。それが港町・神戸だった、ということでしょう(帰郷するというよりも(おそらく)見知らぬ土地という方が、より情感が増すということも考えて)。
場所の特定は意味を成さないこともあります。曲(の詞)自体が持つ意味よりはイメージが優先した大人向けのムード歌謡だという結果になるでしょうが、やはり「神戸」という言葉の響きがこの曲に似合い、ヒットにつながったのだと思いました。


港町には夜霧が似合います。それに耳にどことなく届く霧笛の切なさも。
夜の闇を彩る独特の淫靡さを含む、酒場の灯り。そして男と女。
なるほど、神戸ならではの風景ですよね。こういう曲を忘れずに時々口遊むのも悪くはないでしょう。さすがは神戸、です。