【花の街・神戸その1 梅の似合う風景(東灘区)】
国際港湾都市・神戸は山の緑と海の青に挟まれた風光明媚な土地柄として世界にも広くその名を知られています。
「世界三大美港」はリオ・デ・ジャネイロ、シドニー、ナポリが名を連ねますけれど、私たち「イメージリンク」(IML)が所在する在る神戸の港はそれらに決して見劣りするわけではなく、新しい基準で選出すればこれらのどれかと入れ替わるだけの力を備えているのです。
世界各国の文化と人々が織りなす伝統は、150年前の開港と同時に脈々と受け継がれて来ました。
今回はそんな文化都市・神戸の魅力を、九つある各区に制定された可憐な花々と共に紹介させていただくことにします。
≪東灘について≫
東灘区の歴史は戦後まもなくから始まります。1950年(昭和二五)に武庫郡の内から御影町・魚崎町・住吉村・本庄村・本山村が神戸市に編入されて新たな「区」が設けられたのが始まりです。既に灘区が戦前にありましたので、「東灘」と命名されました。
東灘の地は戦前から高級住宅地として知られ、現在でも大規模な住宅が数多く、六甲山の山麓から南側を中心として所在しています。文化人も多く居住して、その縁から「阪神間モダニズム」が起こり、現在に至っています。
また「灘五郷」の内の「魚崎郷」と「御影郷」が所在し、先の震災では大きな被害を被ったものの現在でも酒造業が盛んな土地でもあるのです。
西の都たる「大大阪」にも近く、交通網も発達しており、利便性も図られていて京阪神間の行き来はとても便利です。山と海の間の扇状地である神戸という街の特性であるが故に南北の傾斜は相当きついですが、道路等もよく整備されていて東西の交通は便利です。
大規模な邸宅が多いだけに緑には恵まれていて、借景である北側の六甲山の山並みと良くマッチしていて独特の美しい景観を生み出していますよ。特に季節ごとに開く花々はとても美しく感じられ、区の花である梅や桜をはじめ、それは年間を通して途切れることなく市民の目を楽しませてくれているのです。
≪海の上の文化都市・六甲アイランド(RI)≫
私たちのIMLは「六甲アイランド」(RI)に所在しています。その西側には神戸市が最初に造営した「ポートアイランド」(PI)が在り、RIはそれを上回る規模で造られました。埋め立て地の一般的なイメージは機能と利便性の一本張りの殺風景な場合が多いのですが、他の土地のそれらとは違い、神戸の二つの人工島は工業基地だけではなく、商業用と文化面を含めての住民の生活の場としての機能もふんだんに盛り込まれているのです。特にRIは住民の生活のために樹木が多く植えられていて、緑陰だけなく季節の訪れと共に花の姿が移り替わる美しさでもしられています。春の間は特に素晴らしく、桜をはじめ色とりどりの花のじゅうたんが訪れる人を迎えてくれるのです。
≪住吉川の水面に映る車両の姿が見える 六甲ライナー(RIL)≫
東灘にはまだまだ誇るべきものがあります。その一つが「住吉川」であり、人口百万人クラスの大都市には珍しい清流でも知られています。両岸には上流に在る「渦森台」造成の際の残土を区内の海岸の埋め立て使用された搬出路が建設されて、現在は「清流の道」として整備されています。渡り鳥が往来する折にはその翼を休めるために、水面に愛らしい姿を見せてくれたりもするのです。沿線には関西に縁の深い小説『細雪』を執筆した谷崎潤一郎(たにざき・じゅんいちろう)の旧居である「倚松庵」(いしょうあん)も在り、豊かな文化の薫りもする静かな文教地区でもあるのです。
その住吉川に並行するように走るのが「六甲ライナー(RIL)」。私たちIMLの利用者も利用させてもらっている新交通システムです。始発駅は「JR住吉駅」の上に設けられた「住吉駅」から終点の「マリンパーク駅」までで合計6駅。新交通という特殊事情はあるものの5キロほどの比較的短い路線です。車両構成は4両編成。平成初期の開業から既に30年が経ちました。近年には開業以来の車両に加えて、新しいスタイルの新型車両も加わり、鉄道ファンをはじめ多くの人たちに親しまれています。IMLの最寄り駅は「アイランドセンター駅」で、住吉からの所要時間は約8分間。山と海までの中間地点から海上都市までの目まぐるしい変化に富み、毎回新たな発見ができる楽しい車窓なのです(マンション等が多い区間は西側の車窓が瞬時に白濁して、周辺住民のプライバシーにも配慮しています)。
コロナ禍以降は本当にその数が減りましたが、神戸港の外航客船用のターミナルに着く大型客船の美しい姿が頻繁に見られていました。早くこの騒動が終わり、あの姿を再び目にしたいものですね。このようにRILはRIの住民や勤務者のみならず、JR〜阪神電鉄間の連絡としての役割も担っていてこの近隣の便利な路線となっているのです。
≪東灘区の花は「梅」≫
戦前までは今の東灘の土地は「梅の名所」として知られていました。江戸時代には「梅は岡本、桜は吉野、みかん紀の国、栗丹波」とも言われていたそうです。残念なことにその梅の姿も1938年(昭和十三)の「阪神大水害」で梅林が大きな被害を受けてからは太平洋戦争、さらに戦後の宅地開発等で消え去りました。惜しいですね。幸い昭和五十年代後半からかつての梅林の復元を始まる事業が始められ、現在ではその地に整備されている「岡本公園」が梅の新たな名所となるつつあるのです。
毎年2月中頃以降の梅の盛りの頃には「梅まつり」が行われ、多くのイベントが催されます。今年はコロナ禍で中止になりましたが、それでも訪れる方は平日でもかなりの数になり、紅・白・ピンク等の可憐な姿を見せてくれます。園内には本当に多くの種類の梅が植えられていて、特に枝垂れの梅は多くの人の目を楽しませ絶好の被写体となっています。起伏に飛んだ園内からの眺めは素晴らしく、南には大阪湾と市街地、東は大阪方面、さらには西の神戸港が一望できるのです。
幕末の開港から150年余り。明治、大正、昭和、平成そして令和の間。走馬灯のように時間の経過と共にその姿がどのように変化して来たのか。考えてみると楽しそうですね。
梅の枝の間には小さな緑色の鳥がすばしっこく動くことも。その正体はウグイス…ではなくてメジロでした。小さな体を機敏に動かして蜜を求めるその姿は本当に愛らしいですね。その他にもたくさんの野鳥が姿を見せて、梅の花の盛りをさらに盛り上げてくれるのです。岡本公園はこれからもさらに手が加えられて、梅の名所の価値はさらに高まって行くでしょう。 岡本公園へは市バスが便利です。最寄りのバス停は「岡本7丁目」となります。周辺道路は住宅街のため、特に公園周辺は本当に道幅が狭くて車での直接の乗り入れはできません。外来客用の駐車場も用意されていないので、公共交通をご利用ください。
何度も書きますが、この東灘は季節ごとの花で常に彩られている素敵な街です。岡本公園の他にも区の花である梅を愛でる憩いの場は他にもあり、高台の渦森台にも「三角公園」という小さな梅林も目を楽しませてくれますよ。規模は大きいものではありませんが、阪神間を一望できる見晴らしの素晴らしさはここを訪れれば季節に関係なく満喫できるのです。ここも市バスが便利です。もしもこのルートから六甲山のハイキングへ行かれるのなら、バスを途中で降りてみて訪ねられるのも良い機会になるでしょう。どうぞお立ち寄りください。最寄りのバス停は「渦森台3丁目」ですよ。 花と絶景の街・東灘。みなさんもこの東灘のお気に入りの風景を探してくださいね。楽しいですからね。