【花の街・神戸番外編 その2 海と山と 天へのびる桜のトンネル(灘区)】
日本では通常、西から東へとゆっくりと桜の帯が動いているかのように桜の見頃が毎年やって来ます。敗戦後に傷ついた国土の復興への願いを込めて多くのソメイヨシノが植えられ、日本各地に名所が続々と誕生しました。近年ではその頃に植えられた桜が次第に衰えて危機を叫ぶ声も聞かれるようになりました。心配です。しかし私たちはそんな中でも常に前向きに物事を考えて困難な問題を解決してきたのも事実。厳しい現実も充分に踏まえて、楽しいことは目いっぱいに楽しみたいですね。今回は灘区の「桜のトンネル」についてです。
【バスが通る道の両端に植えられた桜のトンネル】
≪海と山の間には…≫
わが街・神戸は旧市街が狭く海と山の間を長く東西にのびています。海からわずかな距離で千メートル近い緑に溢れた山が在るということは、傾斜がきついということになります。その分だけ見晴らしは素晴らしく、汗を流しながら海側を望んだ時の絶景はそれぞれの坂道の名物となっているのですね。こう考えるときつい坂道の往来の苦労も半減しそうな気分になる…はずですが…。要は気持ちの持ち方次第ということですな。
余計なことはこれくらいにしますが、神戸は西の長崎と同様に坂道の街なのです。灘区には神戸の名山である摩耶山(まやさん)への登山道があり、その登山客への足として戦前からケーブルカーがあります。先の阪神淡路大震災の時は大きな被害を受けて廃止も検討されたものの利用客と地元の要望もあって、6年後の2001年(平成十三)に所有者が交替して運航を再開しました。
桜のトンネルはその摩耶ケーブ駅(山下駅)のすぐ東側にあり、両端にソメイヨシノが植えられた南北にのびる坂の道となっています。道幅は大型のバス1台が通れるくらいですが、南行きの一方通行なので対向車の心配がないだけより安全に通行できるようになっているのです。ただし、桜の見頃は地元の人以外は車での通行が禁止もしくは制限されることもあります。
トンネルの長さは特筆する規模ではないのが残念ですが、坂の上から見下ろす桜色の帯は本当に絶景です。ここの桜を目当てに訪れる人もきつい傾斜に気を取られながらも皆見とれていて、ゆっくりと時間が流れているかのような雰囲気となっています。周辺は人口百万の大都市の中央で、人家とマンションが建ちならぶ中の絶景。春先の特定の時季のわずか10日程度の短い期間ですが、桃源郷ならぬ桜の幻想郷が現出するのですよ。
桜並木はそれこそ各地に存在しますが、きつい坂道から海へと視線を運ぶ中両側の桜に見惚れる素敵な所はちょっと見当たらない気がするのです。長い冬が無事に過ぎ去った実感が湧くのです。やっぱり、春はいいなあ!
花の時季が終わり葉が生い茂るとこの桜も他の街路樹と同じく、特に足を停めて見入る人がいなくなるだけに花の季節のありがたさを本当に思うのです。
≪桜の通りを通ろう≫
桜のトンネルからは少し距離が離れていますが、同じ灘区には神戸でおそらく一番の桜の名所である「王子動物園」もあります。園内はもとより、その東側にある陸上競技場の周辺はソメイヨシノ以外の桜も咲き乱れる名所ですので、こちらも訪れる価値は十分にあるのでお勧めしておきますね。
これら以外にも灘区から須磨区へかけての桜の並木が途切れ途切れに続いていることをご存知でしょうか。その全てを徒歩で巡るのは難しく、桜が特に見れない区間も結構ありますので、桜の通り道と呼ぶのは大袈裟かもしれません。でもこのような桜の名所を自分なりに見つけて、家族や友人たちと訪れるのは楽しいことです。コロナ禍がまだ終結していないので不要の外出は控えるべきかもしれませんので安易にお誘いはできませんよね。でも楽しいことをするのは悪いことではないので、用心しながら桜を愛でるのよいでしょう。桜も生きているのでその素晴らしい姿をきっと見て欲しいと思っているはずです。通常の生活に戻れる日が早く来ますように。
≪桜のトンネルへは≫
神戸には六甲山という絶好のスポットがあります。摩耶山はその六甲の一部。季節を問わずに多くの人が気軽に訪れる憩いの道となっています。コロナの中での運動不足解消に手軽なハイキングのついでに足を伸ばすのもよいでしょう。市バスで訪れるのなら、先の摩耶ケーブ津駅まで行くことができますので、脚力に自信が無い方はこちらが便利ですね。ただし、桜の季節以外でも交通量は相当に多いので、その点を留意してください。また、下からこのトンネルを目指されるなら結構な傾斜となります。
車で行かれる方は、トンネルは南行きの一方通行なので、少し西側から北行きで入ってくださいね。道幅は狭くて見通しが悪いため安全運転でお願いします。また、専用の駐車場は用意されていませんので。花を目的に歩いている方は本当に多いので常に気配りが必要ですよ。
どこでも同じですが、楽しい気分はお互いの思いやりから。それを忘れないでいれがもっとハッピーになるのです。桜に見とれて見牛わないようにお互いにしましょうよね。そして、花以外の時季も桜のことを忘れないで欲しいのです。秋の紅葉もきれいですからね。小さなことも忘れないで次を楽しむ心のゆとりを持てば、あなたも「人生の達人」になれるのです。
素敵な摩耶山と六甲の魅力については別の機会に書かせてもらいますので、お楽しみに。では、また。