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6月は恵みの季節なのです。「えっ、どこが?」と思わずに外へ目を向けてください。木々の緑は5月よりも増していて、多くの家の庭先ではアジサイが色変えて道行く人々の目を楽しませてくれています。水辺のある公園の中にはハナショウブブも大ぶりな花容も水面に映えて、絵画のような風景を見せてくれますし。来るべき夏を彷彿とさせるクチナシの芳香もこの時季ならではですからね。
今でも少し郊外へ出ると、水を張った田の中にきれいに並んだ苗の若々しくて力強い姿が生命の活力を与えてくれるのです。
確かに湿気と梅雨の時期独特の曇り空も気にはなるでしょうが、これも水の恵みなのだと思い直して夏の陽光を待つことにしませんか。

≪念入りにすれば意外とカンタン 梅干に挑戦しよう!≫

梅干は食の日本文化を代表する一面があります。先ほどの稲が豊かな実りとなり、食卓を飾る時の絶好の飯の相棒となるからですよね。近頃は各家庭で梅干を漬ける、ということも減ったようですけれど市販品とは一味もふた味も違うような…。そんな手作りの方法を伝授させていただくことにします。

〔用意するもの〕


●青梅(完熟した梅よりも扱いやすい)1kg/●粗塩:170〜200g/●瓶:(蓋つきで、できれば広口)/●タオル:(きれいな物を)/●千枚通し:(他でも代用可)/●桶:(瓶でも可能だがこちらの方が使いやすい)/●ザル:(水切り用)/●紫シソ1束:/●シソ揉み用の粗塩:適量:/●その他:菜箸、ボウル、ラップ、ハサミなど

  1. 青梅を傷がつかないようにていねいに洗い、桶にゆっくりと移す。
  2. 青梅全てが漬かるだけ桶に水を注ぎ、しばらく置いておく。
  3. 青梅の実がこぼれ落ちないように水を捨て、ザルに移し替えて水気を切っておく。
  4. 千枚通しで青梅のヘタを取り除き、先ほどの桶へ一粒ずつていねいに入れる。ケガに注意すること。
  5. 瓶を用意し、きれいなタオルで一粒ずつていねいに実を拭き取ってゆっくり瓶の中へ入れる。
  6. 全てを入れ終えたら分量の粗塩を降り注ぎ、瓶の蓋をしっかりと閉じて慎重に中身の梅を動かす。落下に注意すること。
  7. 時間の経過とともに水分(梅酢)が上がってくるので、中身をよく動かして塩分を拡散させる。
  8. 紫シソが出回る頃までにカビが出ていなければ成功。それを確認してからシソの葉をきれいに洗い、粗塩でていねいにゆっくりと揉む。
  9. シソを漬け込み、冷暗所で保存する。

〔ポイント〕

◆塩についてはミネラル分を含む粗塩の方が望ましい。
◆塩を最初に全量入れると溶けにくくなるので、数回に分けて加えるなどの方法もある。
◆瓶はきれいに洗っておく。熱湯をかけて消毒するのは温度差で瓶が割れる原因になることがあるのでお勧めできない。
◆千枚通しでなくても、竹串や爪楊枝でもヘタ取りはできる。いずれにせよケガには要注意。
◆ヘタを取り除きながら実を拭きとると時間短縮になるが、やりづらい。
◆ヘタは必ずしも取り除かなくてもよいが、風味が落ちる原因となりまた食べづらくなる。
◆ホーローの寸胴があるなら瓶よりもこちらの方がお勧め。その際には内径よりも小さな蓋に適量の重しをすればより梅酢が出やすくなる。ただし、木製の蓋は梅酢を吸収するので不向き。重しは重過ぎると実が割れるので注意すること。
◆根付きの紫シソを使う場合は、まず根をハサミなどで切り落とし、根っこの方から水洗いすれば汚れが落ちやすい。それから葉を手でていねいにもぎ取り、葉をきれいに洗い直す。
◆シソの葉は粗塩を少しずつ加えて、ぼろぼろにならないようにていねいに揉む。
◆シソを揉み過ぎると葉がボロボロになるのでやり過ぎないこと。また、揉みが足りないとシソのアクで梅の旨味が損なわれるのでこちらも注意。強過ぎず、弱過ぎずの手加減で、アクの泡が出ないくらいが目安。
◆揉み汁の色は濃い紫だが、これを梅酢に加えては風味が損なわれるので、加えてはいけない。
◆シソを漬ける際には、一旦梅を全部出してシソとの交互の層を作るようにすればやりやすくなる。
◆最初は紫だったシソから出る液の色も梅酢が加わると鮮やかな茜色に変わる。
◆土用の頃の天気の良い時に実を全てザルに挙げて天日干しにすればより美味になる。その際には梅酢もラップして日光に晒せば完璧。

〔ひとこと〕

◆風味のある梅干を作りたいなら専用の梅(多肉で柔らかめで香りが強い)にする方がお勧め。ただし割高で漬ける前に傷が入りやすいのが難点。
◆完熟している梅の場合は水に浸す作業は不要。
◆塩を溶かすために瓶を振る際には、梅酢の透明度も確認すること。
◆きれいに実を拭いた方が梅酢が透明になる。また梅の実は相当なアクが出るので捨てても惜しくないタオルを使うつもりで。
◆梅酢は強い酸を含むので、金属に触れる時には腐食しないように注意すること。
◆梅を漬けた後は、買い物に行くたびに紫シソが店頭に並んでいないかを念頭に置くようにする。
◆シソが手に入らなかった場合は、そのままでも食用にすることはできる。ただしシソを使った方が美味。この場合は翌年のシソに期待するのも手段の一つである。
◆シソを漬ける前の梅酢は、煮魚や煮物の風味付けにも使える。
〔万一、カビが生えてしまったら〕
「塩漬けだから大丈夫」と、安心してはいけません。梅干を作っているとカビが生えてるのも珍しくはありません。
ともかく見つけ次第に素早く対処することが絶対に必要なのです。
◆梅汁のカビの部分をていねいに取り除く。
◆瓶をきれいに洗い、消毒する。
◆梅の実が傷んでいる場合はそれを捨てる。
◆梅の実を日光消毒する。
◆カビ対策用の塩を追加する(塩分の過剰摂取に注意すること)。
◆梅酢を加熱消毒するが、煮立てるのは禁物。
◆食用アルコールを添加するのも手段の一つだが、風味が落ちるのを覚悟する。

※ここに記しているのは対処法の一つであり、もちろん完全ではありませんので、もし行われる際は参考程度にお考えください。


いかがですか。
梅雨の頃に結実するのが梅の実なのです。海からもたらされる雨のラインが地面に落ちる、気が滅入ってしまうかもしれない季節ですけど、視線を少しかえれば、あの豊かな緑の青梅に心癒される気分にしてみませんか。
瓶の中で最初は鮮やかなあの緑が時間の経過とともに黄色が増して行き、落ち着きのあるオリーブ色に変わってゆく。梅から滲み出す水分も意外な早さで上がり、小さな実の神秘を感じさせてくれるはずです。
瓶の中身が無事に落ち着いた頃、日本人の食の知恵を感じさせてくれる紫シソも出回り始め、やがて手を加えて瓶の中で出会う。
こう考えたら、見るだけでも口の中であの豊かな味を感じさせる梅干に対する感謝が自然に生まれるはずですよね。
市販の一品に飽きているなら、こうやって自分の手で試してみるのも楽しいことなのです。
あなたにもこの季節の恵みが届きますように。

次は、同じ青梅を使った「梅シロップ」です。こちらも簡単ですので、よろしかったらお試しください。